毎日を「挽きたてる」スペシャルティコーヒーのおはなし(掲載2020年7月31日)

2020年07月31日(金)

毎日を「挽きたてる」スペシャルティコーヒーのおはなし(掲載2020年7月31日)

 

今回お話を聞いたのは・・・
《高橋 寛充》
コーヒー輸入事業立上げ中。
コーヒーの有名な生産地のひとつグアテマラで、コーヒー農園にコーヒーラボの建設準備中。
1986年生まれ。30才を機に、青年海外協力隊のプログラムで中南米のニカラグアに赴任、カカオ生産者組合で活動。その後、中南米のコーヒーに興味を持ち、メキシコからニカラグアまで現地のコーヒーショップ48件、コーヒー農園を16件、コーヒーに関わる市場を調査。

 

聞き手
《パンくん》
あーすぷらざのファンタジー展示室に住んでいる妖精。
ファンタジー展示室のお友達や、あーすぷらざへ遊びに来たお友達と一緒に遊んだり踊ったりすることが大好き。
たまに、スタッフさんやイベントのインタビューを行っている。
今回は、スペシャルコーヒーについてのインタビューを行った。

 

パンくん:
今日は、コーヒー輸入事業立上げ中の高橋さんにお話しを聞くよ。高橋さんこんにちは。

高橋さん:
こんにちはパンくん。今日はコーヒーについて色々と話しをしようと思っているんだけど、パンくんは普段よくコーヒーは飲みますか?

パンくん:
ん~。コーヒーはあまり飲まないかな。なんだか苦いイメージ!

高橋さん:
そうですよね。実は僕も、コーヒーが特別好きだったというわけではなくて、コーヒー本来の味を楽しむというよりも、苦さを和らげるためにたっぷりミルクを入れるような飲み方をしていたんです。

パンくん:
高橋さんも、根っからのコーヒー好きというわけではなかったんだ!
いつから、コーヒーが好きになったの?

高橋さん:
僕の友人の、それこそコーヒー愛好家に勧められて、日本のコーヒースタンドで一杯の美味しいコーヒーに出会ったことですかね。そのコーヒーを飲んだ時に、「えっ、普段飲んでいるコーヒーと全然違う」と衝撃を受けました。

パンくん:
どうちがったの?

高橋さん:
そのコーヒーの味わいはまさにフルーツを感じる味わいで、イチゴやチェリーのような味わい、さらにグレープフルーツのような酸味を感じて、まるで紅茶のような感覚でした。そして冷めて飲んでも美味しいコーヒーでした。
「なんでこんなにフルーティーな味わいなのか」
その秘密を知りたくて、僕は中南米のコーヒーをまわる調査に出かけました。

パンくん:
へー。中南米のどこを周ったの?

高橋さん:
メキシコ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグアの現地のコーヒーショップ48件、コーヒー農園を16件を訪れました。特にグアテマラではJICAグアテマラにも協力頂き、元隊員で企画調査員の押野さんと一緒に農園調査をしてきました。今回はその調査で仲良くなったグアテマラのアンティグアという古都の近くにあるアドルフォさんの農園の話をします。
アドルフォさんの農園にお邪魔すると、コーヒーの木にはたくさんのコーヒーチェリーと呼ばれるコーヒーの果実が実っていました。黄色や赤、ピンクの鮮やかな色合いが、とても美味しそうでした。この収穫時期(1月〜2月頃)のコーヒーチェリーはパンパンに膨れあがって、1粒を味見させてもらうと、とても甘かったです。

 

パンくん:
コーヒーの実って甘いんだ!

高橋さん:
洋ナシのようなライチのような果汁でとっても甘いんですね。
農園主のアドルフォさんが美味しいコーヒーになるための3つの秘密を教えてくれました。

 

 

美味しいコーヒーになるための3つの秘密

1.コーヒーチェリーの熟し具合

         ①

 

 

 

 

 

写真①はコーヒーチェリーの熟す過程です。右から2番目の赤紫のようなチェリーをたくさん収穫することが大切です。

         ②

 

 

 

 

 

写真②はコーヒーチェリーの糖度を測っています。赤紫のチェリーとピンクのコーヒーチェリーでは糖度の数字が全然違いました。熟しきれていないコーヒー豆は成長途中の豆となり、少し草っぽいニュアンスが味わいに出てしまうとのこと。熟し具合をチェックして、収穫することがコーヒー豆の味わいに大きく影響するようです。

 

2.手で1つ1つ丁寧に収穫していること

 

 

 

 

 

生産量の多い大農園では機械での収穫が多く、機械だとどうしても果実が傷ついてしまい、枝や葉っぱ、小石などの不純物も含まれてしまいます。さらに熟しきれていないコーヒーチェリーも一緒に収穫してしまいます。一方、中南米地域の多くの場所は標高の高い山の斜面に植えてあり、機械が入れないため、人の手で丁寧に収穫されます。収穫する人の腕が品質に大きく関わってくるのです。

 

3.生産者のこだわり

 

 

 

 

 

コーヒー栽培は自然との戦い、病気や害虫にいつも気を配らなければなりません。収穫は一年に一回で、その年の収穫が農家の収入に大きく影響を与えます。丁寧に、丁寧に育てていくことで、最高のコーヒーチェリーが出来上がり、それを最高の状態で収穫、加工・乾燥しコーヒー豆が出来上がるのです。そして、最後に病気や虫食い、傷ついた豆を一つ一つ取り除いて、やっとコーヒーチェリー本来が持つコーヒー豆を作ることができるのです。それを管理・調整しているのがコーヒー農家の仕事です。フルーツの味が残るコーヒー豆には農家のこだわりがぎゅっとつまっているんですね。

 

パンくん:
繊細な作業の末においしいコーヒーは出来上がっているんだね。                  

高橋さん:
そうなんです。そんな繊細なこだわりの作業にもかかわらず、小規模農家のコーヒー生産者の利益は一杯(豆換算で10g)2円以下と言われています。

パンくん:
たったの2円!

高橋さん:
コモディティコーヒー(※1)の場合は、ですね。
コモディティコーヒー豆の生産はコーヒーチェリーを販売する小規模農家、コーヒーチェリーを加工する中農家・組合、コーヒー豆を輸出する輸出業者、バイヤーと消費者に届くまでに多くの道のりを経て消費者に届きます。そして大半のコーヒー豆の価格はその品質に関係なく量によってニューヨーク市場の先物取引価格(※2)で決まっています。

グアテマラの農家の96.8%は小規模農家です。小規模農家はコーヒーチェリーを栽培してますが、発酵や加工する設備は持ち合わせていません。それを持っているのは協同組合や中・大農園です。小規模農家のほとんどの農家は中・大農園にコーヒーチェリーを販売しているため、生産者の利益は一杯2円以下となってしまうのです。

パンくん:            
どうやったら生産者にも利益がいくようになるのかな?

高橋さん
キーワードは「スペシャルティコーヒー」!
パンくんはスペシャルティコーヒーって聞いたことありますか?

パンくん:
聞いたことあるようなないような…。

高橋さん:
スペシャルティコーヒーは、SCAJ(スペシャルティ協会)(※3)が定めた基準を元に、コーヒーの味の品質を点数化してグレードが付いたもの。コーヒー豆の味の品質は以下のようなピラミッドのカテゴリーに分かれ、資格士によって格付けされます。そしてこの基準を設けることで、豆が品質に対して適正な価格で取引され、生産者にも利益がいくようになるのです。

 

 

 

 

 

 

また、コーヒーの世界にはその年に生産されたコーヒーの最高品質を決める、COE(Cup of Excellence)と呼ばれるコーヒー豆の国際品評会があります。こちらで選ばれたコーヒー豆はオークションで取引されます。2019年にパナマのエリダ農園のゲイシャというコーヒー豆は500g、1029ドルという最高価格を出しました。コーヒー豆の品質が高くなれば、取引価格が上がり、さらなる品質改善の投資にまわり、自分たちの豆の価値も高まっていきます。

 

 

 

 

パンくん:
スペシャルティコーヒー、中でもオークションで選ばれたコーヒーはビジネスでも成功を収めるんだね。

高橋さん:
コモディティコーヒーは、世界的な需要と供給によって価格が決まる一方で、スペシャルティコーヒーは品質に対して適正な価格で取引が行われるため、良い品質のコーヒーを作れば作るほど、収入につながりやすいんですね。

パンくん:
スペシャルティコーヒーを作るようになれば、収入が増えるんだ!

高橋さん:
そうですね。インターネットで「スペシャルティコーヒー」やロースターをキーワードに検索すると、あなたの近所にもスペシャルティコーヒーを売りにするカフェ等が見つかると思いますので、ぜひ行ってみてください!

パンくん:
早速検索してみちゃお~っと!

高橋さん:
私達にできることは美味しいコーヒーをたくさん飲んで、小規模農家を応援してあげること、そしてコーヒーを楽しむことだと思います。もちろん、コーヒーのバリューチェーンは複雑に絡み合っていて、様々な問題を持っています。私はこれまでの経験を活かして、その仕組みの見える化と問題解決にこれから挑戦していきます。

パンくん:
今日は貴重なお話をありがとうございました!

高橋さん:
こちらこそ、ありがとうございました。

 

 

※1 商品先物取引市場で取引されているコーヒー豆。農園や生産者に関係なく、同じ銘柄はまとめて取引される。大量かつ安定供給を目的とし、需要と供給によって価格が変動する。缶コーヒーやインスタントコーヒーの原料としても使われる。

※2 特定の商品をある決められた時点で取り決めた価格で、将来の一定日時に売買する事をあらかじめ約束する取引。

※3 http://scaj.org/

 

主催神奈川県立地球市民かながわプラザ(指定管理者:公益社団法人青年海外協力協会)
協力高橋 寛充
お問い合わせ神奈川県立地球市民かながわプラザ(指定管理者:公益社団法人青年海外協力協会)
TEL045-896-2121
E-mailgakushu■earthplaza.jp(■を@に変更ください)

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