【実施報告】平成30年度 第2回 外国籍県民相談等に関する 研修会

■ 日 時:平成30年7月23日(月) 18:00~20:30

■ 場 所:かながわ県民センター 304会議室

■ 対 象:神奈川県内 外国人相談窓口関係者ならびに外国人支援活動団体等

■ 参加者:46名(国際課職員1名、教育相談CO 1名、あーすぷらざ多文化共生・情報課 職員4名含む)

■ 講 師:NPO法人在日外国人教育生活相談センター・信愛塾 センター長 竹川真理子氏

                          スタッフ    福島周氏・王遠偉氏

■ テーマ:「外国につながる子どもの支援」~NPO法人 信愛塾 支援のとりくみ~

■ 内 容:

①講義(センター長 竹川真理子氏)

1.NPO法人在日外国人教育生活相談センター・信愛塾のあゆみ

2.横浜における在日外国人とのふれあい交流スペース

3.地域に暮らす「外国人」の多様化・多様性

4.現場から見えてくる「子どもたちの抱える問題」

5.セーフティネットとしての機能・支援現場でできること

6.居場所としての機能

②支援の現場から(センタースタッフ 福島周氏、王遠偉氏)

③グループディスカッション

 

 

 

 

 

■ 成 果:

今回の研修会は「外国籍につながる子どもの支援」をテーマとした連続講座の第1弾として、40年間に渡り子どもの居場所や教育支援をしてきた信愛塾のセンター長及びスタッフを迎えお話を伺いました。

信愛塾は在日韓国・朝鮮籍の子どもの支援から始まり、現在は呼び寄せ、日本人と外国籍や外国籍同士等の国際結婚家庭、外国籍の両親を持つ日本生まれの子ども、無国籍の人等、国籍だけでは見えてこないルーツや複雑な背景を持つ子どもや保護者を対象に支援を行っており、その支援は、例えば夏休みが始まり給食を食べる機会を失う貧困家庭の子どもに、自分で食べる力を養うことを目的とした料理教室の開催をする等、多岐に渡りそして親身に寄り添った伴走型です。

また、外国につながる子どもや親が直面する問題は、出産後、相談できる人も手段もない為、支援にたどり着かない母子の「乳幼児期の危機」や、言葉の壁やいじめにより居場所がない、あるがままの自分が出せず自尊感情が傷ついたり、情緒不安定で精神発達に影響を及ぼす「少年期の危機」等がありますが、信愛塾は、そのような危機にさらされる子どもや保護者にとって、同じような境遇から成長し、社会で生きていく力を身に付けた先輩という「ロールモデル」や、まず相談できる存在として「聴く」ことに徹する「セーブパーソン」といった大切な場所、存在となっています。心に傷を負った子どもは竹川氏に口汚い言葉を投げかけることもありますが、それを何年もかけて辛抱強く受け止めることで信頼関係が築かれるといいます。

さらには、子どもたちが日々過ごす学校の現場では、国際教室の受け容れ人数や教員の対応の限界といった現状があることから、信愛塾のような存在が「聴く」ことをしながらも、見える課題だけでなく見えない課題に対して、常に想像力を働かせ、DVやネグレクト、セクハラといった問題に気づき、子どもの生活実態に入り込み、支援に繋ぐことが大切だと伺いました。

複雑なルーツや多岐に渡る課題、傷つき自信を失った心に対する支援の方法というものに、決まった答えや正解はなく「向き合う、待つ、聴く、観る」ように〝人と人″としていかに真摯に付き合うかが、すでに支援の始まりなのであり、そこが一番重要な部分なのではないかと感じました。参加者からは「子どもとの信頼関係を築いていくことで子どもの抱える課題の早期発見に努めたい」「学習支援だけでない活動を知れた」「子どもが抱える課題の複雑さが見えた」「国際教室の限界について聞けて大変参考になった」「自分の知りえないケースを知ることができた」という感想のように、子どもをとりまく深刻な現状の一端を知っていただけたと感じます。

後半は「支援の現場」から、スタッフの福島氏とかつての当事者であり現在はスタッフとして子どものサポートにあたる王氏にお話を伺いました。

「信愛塾があるから今の自分がある」という王氏からは、小学生時代に呼び寄せで来日し、言葉の壁に悩んだ心境等をお話しいただきました。参加者の方々からは「外国から日本に呼び寄せられた子どもの苦難が現実のものとして分かった」「居場所があることがどんなに安心感を与えるか、そういった場所の大切さを感じた」等、当事者の話は非常に貴重な機会となったようです。そして、福島氏からは実際に通ってくる子どもの事例と子どもたちの様々な問題が複合的に重なり合っている背景をお話しいただくと共に、それらはすなわち「親の問題」でもあり、今後の人生や成長する子どもとの関係の維持の為にも「親の学び直し」が重要であるとも伺いました。一方、子どもに対しては「独立した1人の人間として成長する為に必要なことを考える、夢を持ちながら生きていく」為のサポートのできる仕組みを作ることが大切であると伺いました。「生活できるだけでなく、様々なことを学ぶ場や支援を受ける支援が必要だと分かった」という感想のように「将来を見据えた活動の必要性」を持ち帰り、それぞれの現場や活動で生かしていただきたいと感じます。

後半のディスカッションは、各グループで研修の内容に関して感想や意見を共有する時間となりましたが「トピックを基にディスカッションできればよかった」といった意見が寄せられました。前半の内容からも、複雑な環境の子どもに対し「どこまで関わって(踏み込んで)いいものか悩ましいと思った」「実際の対応について具体的に聞きたかった」「信愛塾の子どもたちの問題をどう解決しようとしているのか知りたい」といった要望もあった為、子どもたちの困難な状況の共有から具体的な支援の方法について考える時間となれば良かったと思いました。

会を通して「たくさんの事例に対し非常に参考になった」「(同じように学習支援をしている団体として)まだまだ頑張ろうと思った」「信愛塾のような居場所が他の地域にも広がっていけば良いと思う」等、信愛塾や講師達の熱意や活動内容に共感、賛同したという感想や感想が多く、「現場で考え、現場から発信する」竹川講師の「外国につながる子どもや保護者の実態を伝え、広め、一人でも多くの理解や支援につながってほしい」という思いが実現した研修会となったと感じます。